3月21日に原子力事故に関連して、Twitter上で気懸りな出来事がありました。
ヒマワリを植えて、放射性物質を取り除こうという呼びかけがあったのです。
この呼びかけは、誤解を招く危険があると思いました。
生物の体内に、放射性物質が蓄積する事があるのは知られています。
しかし、生物が放射性物質を分解することは出来ません。
上記の呼びかけで、放射性物質が分解除去されるというイメージが広がる危険があると思いました。
当日の内に、Twitter上の発起人に修正を求め、一応の終息を見ました。
翌日、ヒマワリと放射能汚染の関係を調べました。
おおもとの資料と思えるものは、独立行政法人 土木研究所 寒地土木研究所の下記資料でした。
寒地土木研究所月報646 2007年3月号解説「ファイトレメディエーション(植物を用いた地盤の浄化法)について」
植物の金属吸収能力を利用した浄化方法について紹介したものです。
放射線に係わる部分は以下の通りです。
「ヒマワリがセシウム137を根に、ストロンチウム90を花に蓄積することが判明し、危険性が失われるまで30年以上かかる放射性物質を20日間で95% 以上も除去できる能力を有する結果が得られている。」
この記述は、ヒマワリが根から水分と共に金属を吸収し、根と花に放射性物質を含む金属が蓄積することを意味しています。
松樹皮マルチを分散させる方法
私は寒地土木研究所にメールで、ヒマワリが放射性物質を分解するものではないという補足をしていただくよう依頼しました。
幸いにも当日夜、寒地土木研究所で、ホームページ上に発表していただけました。
ヒマワリが放射性物質を吸収した後、放射性物質としてのヒマワリの処理が必要なことも書かれています。
この時点で気になって「ヒマワリ 95% 放射性物質」とグーグル検索してみました。
すると、16,800件ヒットし、ほとんどが当日書かれたブログでした。
すでに数字が一人歩きして急速に広まっていました。
ネットの情報拡大スピードに圧倒されます。
私は寒地土木研究所に再度メールで次のことを補足していただくように依頼しました。
1.ヒマワリが吸収できるのは根の周囲だけであること(空気中や地中深くは含まないこと)。
2.原子炉事故で放出される放射性物質は多くの種類があり、その中の2種類での成果であること。
寒地土木研究所で補正を入れてもらえるとしても明日になってしまいます。
このブログを書いている時点、23日午前3時で確認すると、グーグル検索で41,000件ヒットしました。
誤った情報は過大な期待を抱かせてしまいます。
そして大きな失望となって帰ってきます。
被災地の皆さんにも更なる負担と失望をもたらすかも知れません。
私のブログでの情報発信は微力ですが、何とか誤った情報を修正する一助にしたいと思います。
情報修正を、どうかよろしくお願い申し上げます。
3月25日追記
azeliaは何を意味する
寒地土木研究所のファイトレメディエーションの説明で「30年、20日、95%」という数字が出ています。
この数字は半減期が30年のセシウム137の95%を20日で濃縮したデータがあることを述べてます。
30年が20日に短縮されたわけではありません。
チェルノブイリでは、ヒマワリを栽培しても25年近く一般人が立ち入り出来ませんでした。
この事を読み間違えると、30年かかる事が20日で出来てしまうという誤った希望を抱いてしまいます。
被災地の方々が放射性物質はすぐに無くなる、もと通りの生活に戻れると思い、そのあとで間違いだったと知った時の事を考えてください。
どれほど大きな絶望感に襲われるか、どうか考えてください。
被災地の方々はとても悲惨な体験をしています。
誤った善意に基づく『人災』で被災地の方々を悲しませないでください。
伏してお願い申し上げます。
補足)
私のブログを読んだ上でヒマワリを植えたいと考えている方達へ。
種まきや施肥をする際に、汚染された地域に入る必要があります。放射線防護服などの対策が必要です。
ご自身の安全確保をどの様に行なえば良いか、今一度よく考えて計画と準備を行なってください。
日本テレビの「特命リサーチ200X」でヒマワリの効果を見たという意見を頂きました。
ご指摘がありましたので「人間」を「一般人」に改めさせていただきました。
ハーブは猫にpoisionousですか?
チェルノブイリに一般人が入れるようになったのは事故後15年ではなく25年近くあとでした。訂正いたします。
ウィキペディアの抜粋を転載します。
「訪問 2010年12月21日より、ウクライナ政府は正式にチェルノブイリ原子力発電所付近への立ち入りを許可した。本来は発電所から半径30km以内はそれまで立入禁止であった。ウクライナ政府が正式にこのような許可を発表したのは、現在は発電所付近の放射線レベルが低くなったためとの発表があったためである。キエフからはツアーが催行されている。無人の土地となった現地一帯は、野生動物の宝庫となっている。」
ファイトレメディエーションについて調べた方のブログを紹介します。
「ヒマワリがセシウム137、ストロンチウム90を吸収することについての元論文解説」をトゥギャってます。
詳細な資料、NPO(特定非営利活動法人)チェルノブイリ救援・中部のサイトを紹介していただきました。(※「土壌汚染をどうするか?!」という部分です)
植物栽培の前に汚染状況の調査が必要である事、土を越すと汚染を広める可能性がある事など、その通りだと思います。
チェルノブイリ救援・中部の4月1日時点での意見
『寒地土木研究所月報646 2007年3月号解説「ファイトレメディエーション(植物を用いた地盤の浄化法)について」の修正について』ひまわりの水耕栽培でのデータである事が記載されました。より正確な表現ありがとうございます。
すでにヒマワリの種蒔き運動が、複数立ち上がり具体的な行動が起きています。
グーグル検索での「ひまわり 放射」ヒット数
3月26日08時:1,310,000 件 急速に拡大中です。
3月26日21時:1,320,000 件 拡散スピードは落ちましたが、誤解したままの方が大勢います。
3月27日09時:1,620,000 件 情報拡散中です。
4月5日 「放射性物質と放射線」の記事を書きました、ご参照ください。
4月10日 今朝の朝日新聞5面の記事抜粋。
「福島県飯館村の菅野村長が9日同村を訪れた鹿野農水相に、バイオマス燃料の原料になるヒマワリやナタネの作付けを提案。農水省内にも作付け可能な作物を検討すべきだとの意見が出ている。」
チェルノブイリ原発にも触れています。行政の本格的な対応を期待します。
4月28日 「ひまわりと菜の花」の記事を書きました、ご参照ください。
6月3日
週刊実話に「放射能を20日間で95%除去するヒマワリの能力」と言う記事がでたそうです。
改めて誤解が広まりそうです。
ファイトレメディエーション関連で5月27日に記事を追記しました。「放射性セシウムの土壌への吸着と遊離」水耕栽培についても書いています。ご参照ください。
セシウムとストロンチウムは重金属ではなく金属でした。訂正します。
2012年3月19日
「原子炉事故とヒマワリ」後日談をまとめました。
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by TREview
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